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「苦ぅ──」
その炎の颶風を浴びて、常さんのグラムサイトが解けたのです。
「そこにいたかエルフの娘よ。忌々しいその身体を引き裂いてくれるわ」
キシキシと軋んだ嗤いをして、フンババが舌舐めずりをしながら常さんに近づきました。
「常っ、」
妖怪は見えずともフンババの憑いたライマンが常さんを襲うのを見て、有礼さんは矢も楯もたまらず走ったのです。
「邪魔な人間よ」
憤慨したフンババが、再び口から炎の息を吐きました。その妖気逆巻く紅蓮の炎が有礼さんを包もうとした手前で──
「有礼さんっ、」
その身を挺して、常さんが炎に飛び込んだのです。
「常さん──っ!」
僕は危険を顧みず、常さんに向かって跳びました。
有礼さんを庇った常さん、それを護ろうとした僕に、フンババの炎は届きませんでした。
「シロ殿、遅くなりました」
レオンさんがフンババに一太刀浴びせ、僕らをすんでのところで救ってくれたのです。
まさに危機一髪で、狐の丸焼きになるところでした。
「朝右衛門はどうしたのだ、なぜ我を護らぬっ!?」
多勢に無勢と恐れをなしたフンババが叫びました。
そこにゆらりと朝右衛門さんが現れ、
「儂の仕事はレオン殿を引きつけること。お主を護る約定をした覚えは無い」
と無慈悲な言葉で告げました。
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