290人が本棚に入れています
本棚に追加
「ならば護れっ、我を護れば金ははずむぞ」
「是非に及ばず。女子供に手を掛ける輩を護る義理は無い」
朝右衛門さんが必殺の眼光で、フンババの提案を一蹴しました。
「口惜しや、日本人めっ!」
地団駄を踏んで悔しがるフンババ。
僕はその隙に、常さんに耳打ちをしました。
「常さんのグラムサイトで、フンババのなかにある記憶を幻にできますか?」
「エルフのグラムサイトは、相手の記憶を借りて視力を奪う能力よ」
「それならお願いがあります。僕をフンババのなかにある人物に投影してください」
矢継ぎ早に常さんに告げると、僕は再びフンババの方を向きました。
フンババはレオンさんと朝右衛門さんを前にして、憤りを隠せない様子で荒ぶる神のごとく猛っています。
「憎々しいや、日本人どもめっ!」
旧き魔神が醜悪な顔を歪めて罵ったのです。
「無粋な輩よ。儂とレオン殿を相手にする所存か?」
「刃向かうなら、相手になりますよ」
まさに絶対の双璧と化した二人が、荒ぶる魔神に対峙しました。
「我は魔人と恐れられた魔怪ぞ。生半可な半人半妖が敵うと思ってかっ!」
下卑た嗤いで嘯くフンババに、
「待ちなさい」
と荘厳な声で制止した者がいました。
「お、お前はっ……!?」
あきらかに動揺した声をあげて、フンババの表情が凍りつきました。
最初のコメントを投稿しよう!