第二章「因果の花」四話「花と知る」

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「ありがとう、騎士さん」  差しだされた常さんの手につかまり、僕はやっと立ち上がることができました。それほどに魔神フンババを相手に、真正面から挑むのは怖かったのです。 「店主様と常さんを信じたからです」  僕は頭を下げて感謝しました。 「わたしこそ、シロちゃんを信じて戰えたよ」 「まあ、そこそこ頑張ったなシロは」  店主様が鼻をこすりながら言うと、 『このへそ曲がりが』  と写眞器さんが茶化しました。 「勇敢でしたよ、シロ殿」  レオンさんが微笑みながら褒めてくれました。その後ろに朝右衛門さんが佇んでいます。 「首斬り朝右衛門、お前さんはどうするね?」  意地の悪い笑みを浮かべながら、店主様が訊きました。 「どうするとは?」 「今回は特別サービスで、お願いされれば憑いている魔怪を撮るぜ」 「無用だ。これは首斬りの代償として、儂に課せられた宿業も同じ」 「ほほう、そうかい」 「この命果つるまで、この宿業と共に儂は時代を生きる」  そう言い残し、朝右衛門さんが背を向けました。  ゆらりと歩み去ろうとする背中に、 「ありがとうございました」  とレオンさんが頭を垂れたのです。 「精進召されよ」  朝右衛門さんが一言だけして去って行きました。それは剣を交えた好敵手への、別れの手向けだったのかもしれません。
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