第二章「因果の花」四話「花と知る」

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「それで、しっぺい太郎なんですね」 「ほら、しっぺい太郎を短く言うと、シロになるじゃない?」  アオネさんが思いついたように言うと、 「ああ、たしかに。それもそうですな」  と次郎長親分は腑に落ちたように笑いました。 「ありがとうございました。これも九一様と皆様のお陰です」  有礼さんと常さんが、頭を下げて謝辞を述べました。 「これを、九一様に」  常さんがそう言って、「水の指輪」を差しだします。 「その身の妖精を取ること、本当に良いのかい?」  店主様が神妙な面持ちで尋ねると、 「良いのです……もう、わたしとエルフは一心同体ですから」  と常さんは覚悟したように言いました。 「たとえ人と交わっても、妖精の精を宿した子供が生まれるかもしれない」 「存じています……それでもわたしは、有礼さんと一緒になる運命を選びます」  静かにうなずく常さんに、 「生涯大事にすることを、常とその身のあやかしに契約しますよ」  と有礼さんは強くうなずきました。 「住するところなきを、まず花と知るべし──」 「九一様、それは?」  ふと店主様がもらした言葉を、常さんは意味を問いました。 「同じ場所で留まるのではなく、常に変化し続けることが芸の本質である、という意味で世阿弥が『風姿花伝』で言った言葉です」 「留まるのではなく、常に変化し続ける……」
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