第三章「心託されて」一話「遺言の隊士」

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(バターが付いたパンって、一体どんな味なんだろう? アオネさんのコロッケより美味しいかな?)  もう僕の頭のなかは、バター付きパンの想像でイッパイになりました。  フワフワした心持ちで店主様の後ろを歩いていると、 「ラムネ、ラムネ、ラムネはいらんかね~♪ 飲めば身体が透き通る魔法の水だよ♪」  なんだか聞いたことのある声が聞こえてきました。 「あれは……アオネの屋台じゃねえか」  嫌なモノを見たように、店主様が舌打ちしました。  それで見ると、アオネさんがガラガラと屋台を引きながら、聞いたことのないモノを売っていました。 「あらちょいと、九一さんじゃない? それに魯文さんとシロちゃんまで!」  目ざとく僕たちを見つけたアオネさんが、バタバタと駆け足でやって来ます。  僕たちは逃げることも叶わず、お互いに気まずい顔を見合わせました。 「ちょうど良かった。ラムネ買っとくれよ!」  周りの怪訝な目も気にせず、アオネさんが三本の瓶を差し出します。 「……なんだ、そのラムネってえのは?」  店主様が煙たそうな表情で訊きました。 「新しい飲み物で、ラムネードって言うのさ」 「それを言うなら、レモン水のレモネードじゃねえか?」 「なんだか間延びして歯切れが悪いから、あたしは短くラムネと呼んでいるけどね」
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