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「新撰組? まだ生き残りがいたのか」
店主様が感心したようにつぶやきました。
「生き残りで悪かったなっ」
「そう怒るな、褒めたのさ。それに、俺は新撰組の縁者なんだぜ」
「縁者……だと?」
「それは俺の店で話そうか。ここでは人に聞かれるからな」
流れ過ぐる雑踏をアゴでしゃくり、店主様が元来た道を引き返しました。どうやら、バター付きパンはお預けのようです。
眉根に皺を寄せながらも、鉄之助さんが成り行きに任せて歩き出しました。
「俺は鉄之助だ。さっきは呼び捨てで悪かったな」
鉄之助さんが歩きながら謝りました。
「僕は野狐のシロです。鉄之助さんは前から妖怪が見えるのですか?」
「子供の時分は気配だけだったが、蝦夷地でそれが見えるようになった」
「蝦夷地……ですか」
「今の呼び方だと北海道か。それより、さんは付けなくて良い。鉄之助と呼んでくれ」
「とんでもないことです。お客様に失礼ですから」
「シロはあの人に仕えているのだろう? 俺も同じだ。だから、俺たちは仲間だ」
「鉄之助……も、誰かに仕えているの?」
「さっき言ったろ。俺は土方先生の小姓(こしょう)だ」
「小姓?」
「主君の側に仕える役目だよ。俺が仕えるのは、この世に土方先生だけだ」
「そんなに凄い人なの?」
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