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店主様にそう言われて、鉄之助は沸き上がる感情を抑えられずに涙が溢れました。
「泣くな鉄之助。まだ土方歳三の小姓を名乗るなら、役目を終えぬうちは泣くんじゃねえ」
「……ッ!? は、はい!」
まるで土方歳三に言われたみたいだ、という表情で鉄之助はぐっと堪えました。
「それで、九一堂を訪ねた理由はなんだ? どういう事情があるんだ?」
店主様が再び話を戻します。
「新政府軍に追われて函館の五稜郭から俺を脱出させるときに、土方先生はある命令を託したのです」
「函館から脱出して来たのか」
「土方先生が亡くなった今、それは先生の遺言となりました」
「土方歳三は、新政府軍の総攻撃に僅かな兵で抗戰して、凄まじい最期を遂げたそうだな」
「はい。新政府軍を相手に徹底抗戰して、最期は銃弾に斃れて戰死したと聞きました……」
そこで鉄之助は、感極まってしばし声を失ったのです。
「その土方から預かった遺言とは?」
「新撰組が瓦解した原因の、ある事件に関わることです」
「その事件とは?」
「新撰組局長であった近藤 勇(こんどう いさみ)先生が、流山で捕縛され斬首されたことです」
「ほほう。それで土方の遺言とはなんだ?」
店主様が興が湧いた声で尋ねます。
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