第二章「因果の花」一話「道ならぬ恋」

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第二章「因果の花」一話「道ならぬ恋」

「では、九一様によろしくお伝えください」  妖怪「石塔磨き」さんが言いました。 「はい。たしかに受け取りました」  僕は荷物をもらいながら答えました。 「おっ、今日もお使いかい?」  帰ってきた妖怪「一本ダタラ」さんが、購入した材料を降ろして訊きます。 「まだ新米なので、皆さんに顔を覚えてもらうためです」 「そんなに可愛い顔なら、誰もが一発で覚えるもんさ」  一本ダタラさんが汗を拭きながら、一つ目の顔をほころばせました。 「これ、一本ダタラや。シロ様はお仕事ですから、軽く扱ってはいけませんよ」  石塔磨きさんが眉根を寄せた渋い顔で注意します。 「まったく神経質でイケねえや。お前は黙ってレンズを磨いてりゃイイんだよ」 「お前さんは、無神経でイケないよ。それでは、お客様相手の商売はできません」 「オイラは職人だぜ。良い物を造るしか能が無ェんだ」 「だから、お前さんは駄目なのです」  また、いがみ合いになりました。  僕が店主様のお使いに来るたびに、いつもこうなります。それでもこの二人は、同じ店で作業をしているのだから不思議です。  写眞師の店主様は撮影用レンズを輸入して、自分の名前を刻んで売る商売もしています。
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