5人が本棚に入れています
本棚に追加
寄せては、引いて。
どこか落ち着く波の音を聞きながら、今日もいつもの朝。
だけどこれは本当の波じゃない。
誰かがヒーリング用に創作した音源。
これじゃあ満足出来ない。
でもここは都会だし、海は見えないから。
仕方ないといつも諦める。
私は海が好き。
きっかけは、小さい頃。
よく遊びに行く田舎のおばあちゃんの家の近くに海があって。
気がついたら、ずっと側にあった。
あるのがあたり前だった。
太陽に反射して、水辺が淡い煌めきを放つ。
波の音が心地いい。
浜辺に寝そべって。
キレイな青を眺める。
海の青と、空の青が分かれることなく重なって。
青に包まれる。
ザザンッ……ザザンッ…。
作り物の波の音が耳から伝わる。
もう少し。このままでいたい。
目を閉じて静寂に浸る。
そんな私の風景を壊してしまったのは、耳をつんざく電車の音だった。
最初のコメントを投稿しよう!