椎名 海

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ハッとして閉じていた目を開けた。 電車が駅のホームに入ってきたと同時に、風が吹く。 その拍子にイヤホンが外れて、呆気なく現実に引き戻された。 ああ。眠たいなあ。 なんてアクビをしながら、しばらくして止まった電車に乗る。 朝の電車は嫌いだ。 だって人が多いし、窮屈な気分になる。 退屈だ。 同じ高校の人。 他校に通っている人。 朝から大変そうなサラリーマン。 電車の中で化粧を直してる女の人。 みんな今日も同じで。 いつもと何も変わらない。 だけど今日はラッキーだった。 2両目は人が多くて、隣の3両目に移ったらちらほらと席が空いていて。 珍しいなあ。って思いながらも、ちゃっかりそこに座った。 学校の最寄駅まではまあまあ時間がかかるし、少し寝ようかな。 そう思っていたら。 ゴトン、ゴトン。と揺れだす電車が子守唄みたいに、意識が遠くなっていく。
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