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「波流は寂しかったんだと思う。
まだ母さんが亡くなった事も理解出来ない位の歳だったし。
だから。俺と親父の気を引くために、ある日家から居なくなったんだ。
……つっても、ちゃんと置き手紙があったんだけど。
それから一日中、親父と波流を探しまくった。
それでも置き手紙をしてった割に。波流、全然見つかんなくてさ。
公園とか。
確か親父は隣町まで探しに行ってた。
だから急に不安になった。
母さんみたいに、波流まで居なくなったら。俺どうしたらいいか分かんねえって思った。
そしたら。いてもたってもいられなくなって。
俺、交番に行ったんだ。
そしたらちょうど、波流が知らない奴に連れ去られて行く所を見たんだ。
そいつさ、波流を抱いてよく分かんねえ建物の中に入ってってさ。
俺は怖くて。何も出来なかった。
立ち尽くすだけで、波流を助けてやる事が出来なかった。
そんな俺に、交番の人が言ったんだ。
君の妹さんは俺が必ず守るから。
だから君はここに居て、ここで、俺達の帰りを待っていて欲しいんだ、って。
そう言ってその人は建物の中に飛び込んでいったんだ」
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