椎名 海

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何?さっきからおかしい。 一体どうなってんの? そんな私とは違い、困惑している声が後ろから聞こえてくる。 どうやら、私の髪の毛が彼のブレザーのボタンに引っかかってしまったみたいだ。 「………え、まじ?」 まじだよ。まじ。 大まじですよ。 そう心の中で返事を返す。 「ごめん。今取るから待って」 「……あ、どうも。ありがとう、ございます」 頭の上から声がするけど顔が見えない。 背中越しに会話するのって、なんか変な感じだ。 しばらくして頭の痛みが無くなったから、取れたんだなあと思って。 そのまま後ろを振り返ったら。 最初に目に入ったのは、キレイな青。 正確には。 彼の耳元で光るキレイな青のピアス。 朝日を受けて、深く透き通ってる。 「……海みたい」 他とは違う。 特別なピアスだと思った。 いつの間にか思っていたことが声に出ていたみたいで。 しまったと思った。 だけど、返ってきた彼の言葉は予想外だった。 「すげえな。誰も分かんねえのに」 「え?」 「俺も海みたいだと思った、これ」 「うん。私も、そう思った」
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