第1章 朝礼

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現場につくと、専務は現場からすでに離れており業務部隊が手を止めて休んでいた。 「桜井、遅えよ。この玄関ドアの採寸したのお前だろ。寸法が5ミリ小さくて外の額縁と外壁の間が空いちゃうんだよ。どうすんだ?」 工事の村上が陰気な表情を桜井に向けた。 ーーたった5ミリ?しかも小さい? なんだ、小さいならコーキングをすればいいじゃないか。助かった。ーー安堵感で顔の緊張が緩んだ。 「すみません。その隙間コーキングしてもらえませんか?」 腰を曲げ、頭を下げる。 「ダメダメ、見た目がカッコ悪くなるだろ。発注し直しに決まっててんだろが」 あくまでも譲らない。 物事を小さくみたと思われたのが気に入らないらしかった。 ーーそんな。これぐらいのコーキングはいつもやってるのにーー 自分の仕事に対して誇りをもたず、すべて営業に責任をなすりつけるせこい根性ー。内心、村上を見下した。不穏な空気が流れる。 「村上さん、すみません。僕から専務のほうによく説明しておくのでコーキングしてもらえませんか?お願いします」 見かねた山田が口を挟んだ。 「山田がそこまで言うなら しょうがねえな。ちょっと休憩してからやるから待ってろよ」 山田が顎をしゃくった。 慌てて近くの自動缶売機に差し入れの缶コーヒーを買いに行く。戻ると村上と山田が仲良さそうに話していた。
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