第1章 朝礼

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「とにかく、これから町場建築の事務所に言って謝りましょう。村上さん、施工よろしくお願いします」 事務所は車で10分ぐらいの距離だった。山田も桜井も無言だった。 町場建築の入口の自動ドアを開けると、胡蝶蘭が飾られていた。右側には広い打ち合わせスペースがある。注文住宅を専門にしており頻繁に施主が訪れる入口付近には特にデザイン性に力が入っていた。奥から不機嫌そうに専務が現れた。身長は170センチくらいで桜井より少し高くピンクのラルフローレンのポロシャツにビンテージ物のジーンズにイタリア製の革靴の出で立ちだった。施主との打ち合わせでもこの格好なのを何度も目撃している。スーツか作業服が当たり前の世界では異色。個性を気取っているつもりだろうが、それが逆に鼻についた。
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