第1章 朝礼

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まず口火を切ったのは係長の山口だった。 「で?で?じゃあその足りない分を何を売って詰めるんだよ」 すでに口調はイラついていた。唾を飛ばしながら鬼の形相で桜井を睨みつけている。 「林田建設の石田邸のサッシを受注してきます」 「どうやって?」 「専務にお願いしてきます」 山口は呆れたように首を捻ると、下を向いている桜井の目の前のテーブル板を思い切り叩きつけた。 思わずビクッと体がすくんだ。 「前も俺、お前に言ったよね。先月頭に同じような報告をお前がしたとき必ずサッシだけは受注してこいよって言ったよね。だけど結局サッシも貰えてないんだろ? ただお願いするだけで貰えるの?」 「…はい」 「はいじゃねえよ。どうせ貰えないんだよ。方策も何もなくてただすがりついてお願い営業の営業マンに誰が仕事だすんだよ。だから他に何をするかを言えよ」 ヘビのようにどこまでも追い詰めてくる。逃れられない。 「リビング建材、床材、階段も受注してきます」 「は?サッシももらえねえやつがよくそんなことが言えるな。俺がなんでこんなにつめているかわかる?前期も数字ぼろぼろだったよね。自分の立場わかってる?前期の最後にお前に来期どうするつもりか聞いたら自分で来期は後がないから死にものぐるいでやるって言ってたよね?死にものぐるいでやってたら数字は出るんだよ。それでこのざまなの?」 山口の狂ったような狂気の目が突き刺さった。 何も答えることができなかった。視線を避けひたすら手元の資料に目を落とした。 「私からは以上です」 ボクシングの試合で例えるならばファイティングポーズを取る気力がなかった。戦意喪失。 それほどの先制パンチだった。
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