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「あ、ごめんねェ?、かわいいワンピだね! えっと、その、ろくじょーいんはるいちさん? ていう人に、なにかご用なのォ?」
やさしく対応するアイとは逆に、ルイはわざとらしくコツ、コツ、とヒール音を響かせ、少女の前へ立ちふさがる。
「知っていたとしても、見ず知らずの無礼な女にやる情報なんてないわよ」
「失礼しました。私は六条院陽芽子。南青山中学校の一年生です」
自分より五〇センチ以上大きなルイに見下ろされていることに、陽芽子は名乗ってから気がついた。
ルイの、まばたきするたび音がしそうなボリュームあるつけまつ毛にも、まぶたに乗せた濃い紫のアイシャドウにも、真っ赤なルージュにも、普通なら目を見張って恐ろしいものを見たとばかりに顔を背ける。陽芽子は負けるわけにはいかないと、胸を張って続ける。
「ろ、六条院陽一は、私の叔父です。探しているのです。なにか知っているのなら、教えていただけるまでここから動きません」
陽芽子を止めかけた刑事も、肩幅に広げた両足を見て口を結んだ。諦めたように背を壁につけてしまう様子を見るに、陽芽子のこのポーズに見覚えがあるのだろう。何を言っても聞かない強情さが、引き結んだ口元にあらわれている。
ルイの口紅の赤に負けない、若さゆえの自然な赤みが、そこにいる全員の目に、おそろしいほど焼きついた。
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