一章

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 六条院家は代々警察官の家柄です。祖父は警視総監をしていました。私が小さいころに亡くなってしまい、全く覚えていませんが……。あ、アイさん、笑わないでください。確かに私は今も小さいですが、祖父が亡くなったのは私が二歳のころだったと聞きます。ホームビデオの中の優しい祖父の姿しか知りません。私はその妻である祖母と両親との、四人家族で暮らしています。  父は警察庁の幹部で、六条院家に婿入りしました。本当は、母には弟がおり、家を継ぐのはその弟の陽一さんだったそうです。陽一さんは六条院の者らしく大学、そして警察学校を卒業後、半年間警視庁に勤めたようですが、突然に辞表を出して行方知れずになってしまったと聞きます。母に尋ねても、理由も行き先も教えてはもらえませんでした。今陽一さんがいる場所を、母も知らないのかもしれません。 私はある理由から、陽一さん――叔父を探しています。先程ここにいた刑事は父の部下で、よくしてくれる方です。あ、はい、独身です。確か三十歳だったはずですが……続けてもよろしいですか? ありがとうございます。 私は彼にお願いして、探偵の真似事をしてもらいました。仕事の合間にお願いしたので時間がかかってしまいましたが、あなた方のお店に関わりがあるということまでわかったのです。どうかご存知のことがあれば教えていただけないでしょうか。
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