奇妙な神学生

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伊藤と純は、朝からピアノコンペディションの特訓をウリエルから受けていた。 カノウと良はオペラの特訓をガブリエルから。 ラファエルは4人を神学校で監視していた。 聖ミカエルの敷地の広大な庭園の一部を解放していたが、世界中からくるファンでごったがえしていた。 生徒達の静かな環境が脅かされて来たので、天使達3人も避難して来たのである。 観光客らは、マナーのいい人達だけではなく、ゴミを散らかす者、生徒に記念撮影をねだる者が、あまりに多くなりすぎた。 ラファエルもウリエルもウンザリしていた。 まるで、ハリウッドスター並である。 ラファエルは、最近出版したボランティアの為のヌード写真が評判を呼び、映画のオファーなどもあり、聖ミカエルはスターの登竜門化していた。 格調高いクラッシック世界では珍しい現象である。 その事にも、天使3人は危機感を持っていた。 「まるで、ラスベガスのショーの世界だ」 「クラッシックはあくまでも芸術家でなくてはいけない。これでは、単なるパフォーマーだ」 「原点回帰が必要だな。ショービジネスは短命だが、クラッシックの実力は本物で無くてはいけない」 そんな理由で、コンペディションの強化を図ったのである。 狙うは、優勝。 オーケストラの前で演奏する実力をつける。 アンティークドールのピエロ達は残念ながら、演奏は学生の域を出ていなかった。 仮面やきらびやかな衣装で誤魔化し、演奏も、ボーカルから口パクということで、手を抜く者も多かった。 普段、女の子とほとんど接した事の無い、モテ無い生徒達が急にモテだす。 当然、風紀も乱れる。 空中分解は時間の問題である。 そんな、危機感もあった。
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