29人が本棚に入れています
本棚に追加
ジークが我に返ったとき、既に夜の帳が降りていた。考えがまとまらない中、野宿の準備をなんとなく始めた。
空腹に気付いたときに自分が失禁していたことに気付き、王冠も持っていることに気付いた。
「こんなもの...!!!」
王冠のせいでドラゴンに追われることになったんだ!!と捨ててしまいたい感情が芽生えるがドラゴンが戻ってきたときに無いと激怒するのでは無いかという理性がそれを拒んでいた。
火をつけるのに四苦八苦し、ズボンを川で洗い、食事をとり、そろそろ寝ようと思うが寝付けない。なんとなく考えてしまうからだ。ドラゴンが来てここがナワバリだから魔物がいないという考えにも至った。
そこから自分のいる場所もだいたいわかった。街の周辺でドラゴンの目撃情報があるのはマショナ城だけだ。距離にして130キロくらいだ。思っていた以上に遠くに来た。
マショナ城は100年前にドラゴンの襲撃を受け、城下町もろとも壊滅、城に蓄えられていた金銀財宝はドラゴンが目を光らせ、今も城にあるというものだ。この王冠はマショナ城にあったものなのだろう。
「よし、場所は多分わかった。明日になったら街に向かって全力で逃げよう。うん。」
そうと決まったら後は寝るだけだ。なぜか不安が拭えないが無理やりにでも寝ようとしてみた。
気がつくと朝だった。寝たのも明るくなりかけていたときだった気がするがとにかく寝た。空は曇天。朝食は基本食べないから顔を洗えば即出発だ。荷物はないので街へ向かおうと歩き出すと足元に何かあるのを思い出す。
「王冠どうしよ.....」
とりあえず被ってみた。普通に重いので10歩歩いたあたりで外す。その時、目の前の草が揺れた。昨日の今日なのでジークは思いっきりビビる。何より今まで魔物も動物も見てないので大いにビビった。
「やばいやばいやばい。今度こそ死ぬ。ドラゴンとかもう嫌。誰か助けて....」
草から顔を出したのは強気な顔した猪だった。猪はジークを見つけるといきなり突進をしてきた。慌てたジークは王冠を前に突き出し、目を閉じた。直後に鈍い音と強い衝撃が襲った。
恐る恐る目を開けると猪は白目をむいて横になっていた。
「....この王冠強い.....?」
王冠の有用性を見出し、猪アタックの衝撃であることを思い出した。
最初のコメントを投稿しよう!