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「そういえば村のお婆さんが片腕しかないオークの話をよくしてくれたっけ。」
村で1番歳をとったお婆さんは子供が集まるとよく隻腕のオークの話をしていた。内容は川のほとりに血だらけで倒れている人影があったから手当をしてあげたら正体はオークでびっくり。逃げようと背を向けたらオークが片言でお礼を言ってくれたが立ち去った。次の日になっても気になってしょうがないので見に行くとまだ同じところにいた。そこで食べ物をあげてみると大喜び。それからしばらく経った頃、村にゴブリンの集団が襲撃してきた。男達が健闘するも徐々に追い詰められもうダメだと思った瞬間、オークが助けに来てくれた。オークは片腕をなくす大怪我を負ったものの村を救った。という話だ。この話をした後、お婆さんは魔物も悪いのばかりじゃないんだよ、っと決まって口にしていた。
ジークはその話を思い出すと猪を縛ってから進行方向を変えて歩き出した。街から旧マショナ城へと向かいだしたのだ。
あのドラゴンは言葉が通じた!!だからきっと話せばわかってくれる。王冠を返して、猪でもあげればきっと許してくれる筈だ!!
もちろんそんな保証はないのだが、今はとにかく信じて歩き続けた。
ーーーーーーーー
6時間後
「......やっとハァハァ...見えた....ハァ..ハァ」
途中で道に迷い空が一部だけ赤くなっているのを見つけ、そちらへ向かいようやくたどり着けた。ドラゴンの住処であろう旧マショナ城はあちこちから火の手が上がっているが汗水垂らしてようやくたどり着いたジークには達成感しか感じていなかった。
旧マショナ城は切り立った崖の上にあり、崖を下っていくと城下町に出る作りだが、ジークに見えておるのは岩壁の方でマショナ城の裏側だった。ぐるっと回らないといけないことに気付き、ため息が漏れるがとにかく城のすぐ下まで行こうという決断に至り、まっすぐ城の向かって行った。
「.......!!!!!」
突如として感じたことのある威圧感、恐怖がジークを襲った。紛れもないドラゴンのものに違いなかった。
「逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。」
何度も何度も自分に言い聞かせて草むらから顔を覗かせた。するとそこには血だらけで横たわるドラゴンがおり、こちらをじっと睨みつけていた。
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