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薄手のカーディガンを羽織り、玄関の戸を開けると、冷たい外気が入ってきた。
宅配業者の差し出した書類にサインをし、ずっしりと重たい段ボール箱を手に持つ。
“それなのに”両親はこうして実家から食べ物を差し入れてくれる。
米にレトルト食品、実家の畑で収穫した野菜。今回は厚手のマフラーも付いてきた。自分のことを快く思っていないはずなのに、まるで応援するかのように食べ物などを送ってくれる。野垂れ死にでもされたらそれこそ困るからだろうか。
「ノーベル賞、取ったら賞金1千万スウェーデンクローナ。日本円に直せば約1億5千万円か……」
このお金を親孝行に使えば、こんなドラ娘でも許してくれるだろうか、などと考える。自分の行いを両親が理解してくれる日は果たして来るのだろうか……。
朝一番で届いた荷物を軽く仕分けして、愛里は身支度をする。
「さあ、今日も実験頑張ろうっと」
まだ少し時季が早い気もするが、届いたマフラーをくるりと首に巻き、愛里は東央大学農学部キャンパスへ向けて、いつものように出発したのだった。
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