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頑張り過ぎだよ。私ならとっくに逃げてるよ……。
悲しかったよね。辛かったよね。
「お父さん……」
誰もいないから泣きたいだけ泣いた。涙は止むことを知らない雨のよう。
テレビで見たことがある顔。安西慎二。オールバックの若い青年。その顔が憎悪で歪む。大切な人を奪われる苦しみ。ニュースでよく報道する遺された遺族の記者会見。成実はそれを今まで他人事のように見てきた。でも今は違う。大切な人を奪われる苦しみは憎悪を生む。安西慎二が憎い。
成実は涙の粒を拭うこともなく、ポケットに入れていた手紙を取り出し、折り畳まれた手紙を開いた。それと同時に手紙の中からこぼれるきらびやかな物。
星のペンダント。
お星さま取って。
成実の記憶から幼い頃の思い出が思い返される。
成実は再び視線を手紙に向ける。雑に綴られた文脈は精神の乱れからくるものだろうか。その手紙の文字はヒドく読みにくい。手が震えていたに違いない。成実は手紙を読んだ。
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