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─────成実へ───
この手紙を読んでいるってことは無事に茨城県に着いたんだな。よかったよ。
ゴン爺を見たかい?ガマガエルみたいだったろ。ゴン爺は私の古くからの友人だ。遠慮せず、茨城県に置いてもらうといい。
思えば、成実と過ごした日々は私にとってかけがえのないものだった。
自分の命よりも大切なのはこれまで愛する有香ただ一人だった。成実、君のママだよ。それが今や自分の命より大切な存在が二人もいる。有香。それに私と有香の子供である成実だ。
私は成実が産まれた時のことをよく覚えている。成実は未熟児で1850グラムしかない赤ちゃんだった。保育器に入れられ、何本もの管を通される成実の姿はとても痛ましかった。心配で心配で夜も眠れない日が続いた。
頑張って懸命に生きる成実。それは私に生の脈動を感じさせられずにはいられない。
退院には二ヶ月を費やし、最初に成実を抱き抱えたのは皮肉にも同席していた成実の祖父。おじいちゃんの久男(ひさお)さんだった。私にとっては義理の父にあたる人で、成実にとってはおじいちゃんだな。
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