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すると、不意に冷たい物が成実の頬に触れる。
「きゃっ!」
「ほれっ」
リクだ。リクが紅茶の缶を持って成実に渡す。
「好きな飲みもんわかんねえーからよ」
照れ隠しのつもりなのか、頭を掻き、はにかむ。
缶珈琲のバルブをリクは開け、勢いよく飲んだ。
「んめえーなあー!違いのわかる男、リク様だ!」
「ふふふ」
成実は笑った。だって、すごく可笑しいもの。十八で珈琲(ボス)飲んで、違いがわかる男って。
「なんだよ!?」
「十八で違いがわかる男って可笑しいよね」
リクはムキになる。
「俺様はな、こー見えても珈琲に詳しいんだ。香りと味で何産の珈琲なのかわかるんだぞ」
「嘘くさーい!」
リクは笑わせてくれる。いつも軽いノリだけど、一緒にいると楽しくなって、悲しいことを忘れさせてくれる。リクに好意を抱いている自分に気づいたのはこの時からだった。
「隣座るぜ」
「うん」
成実とリクは間もなく日が上る夜空を眺めた。星と月が瞬く。まるで空に宝石が散りばめられているようだ。
「キレイ……」
成実は口をこぼす。リクは缶珈琲を片手に冗談っぽく笑顔を浮かべた。
「星取ってとか言うなよ」
「大丈夫」
「?」
成実は胸にある星のペンダントを握る。
大丈夫。星は取ってもらったから。
お父さんに。
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