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「…うん」
おばあちゃんが続けた。
「そうだね、でも負けて悔しいときもあったし、辛いときもあったし、でもやっぱり楽しかったろ」
「…うん、楽しかった」
僕が見上げると、おばあちゃんはにっこり微笑んだ。
「それでも終わりは来るの、ずっと続ける訳にはいかないの、人生も一緒、かならず終わりはあるんだよ」
おばあちゃんの流してる涙は悲しい涙ではないのかもしれない、僕は思った。
「おばあちゃん、僕分かった」
僕は帰らなきゃいけなくて、おばあちゃんも行かなくちゃいけない所があるんだね。
僕が人生の運動会を楽しめたら、またいつかおばあちゃんに会えるかな。
「うん、必ず会えるよ、おばあちゃんのことを忘れるくらい楽しんでおいで」
おばあちゃんが両手を掴んで言った。
「おばあちゃん嬉しい、ひろきにちゃんとバトンを渡せたから」
その手が放れると、また大きな風が吹いた。
「おばあちゃん」
今度の風は僕の体をも吹き飛ばすいきおいだった、僕は目も開けられないほど、あおられた。
「さよなら、ひろき」
おばあちゃんの声を聞いたけど、僕はその後のことは覚えてなかった。
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