ただ好きと伝えるだけ

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他の男子もそうだったし、女子だってそうだった。とうのあいつはというと、あいつはそうでもなかった。女子とも分け隔てなく接することのできる男子と混じって野球やったり鬼ごっこしたりしていた。たまに僕にも話しかけては来るけど、僕の方がそんなんだから、やがて距離が離れていってしまった。  遠目に見る彼女は、何一つ変わっていないように見えた。  でも実際、彼女も僕と同じように年頃の感性に悩んでいたのかもしれない。  僕たちは微妙な距離のまま高校生になった。同じ高校に行くと知った時も、「よろしく」としか返せなかった。  それから数か月、彼女は女の子らしくなっていた。  クラス的にも離れていて、普段顔を合わすことがなくなっていた。でも、同じ学校、同じ学年の同じ階を行き来していればいつかは顔を合わすことになる。そうして久しぶりに見た彼女は本当に女の子っぽかった。  一瞬誰だかわからなかった。かわいい子もいるもんだなーなんて思っていたらまさかあいつだった。  まず僕の目を引いたのは、長い髪だった。最後に見た彼女を必死に思い出しても、やはり髪は短かった。  髪を伸ばすだけで随分印象が変わるものだと初めて知った。
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