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「うん」
「でもいちいち家まで行く勇気も出だろう?」
「うん。告白する勇気も、出ない」
「だろうね」
「…………」
向かいの校舎からいろんな先生の声が聞こえてくる。僕らが今いる屋上は、音楽室やら美術室がある特別棟だ。音楽の授業があれば話は別だが、今は何も聞こえてこない。美術か書道か、何かしら授業はしているはずだが、美術も書道も無言でやるものだ。聞こえないのも当然だ。仕方がないから向かい側の一般棟の授業をぼんやりと聞く。
「お前らあ! モル濃度覚えたか!?」
ここまではっきりと聞こえてくる野太い声の持ち主は、勝田だ。声もそうだが、体格的にも体育教師然としているのに、専攻は化学。授業中、どうして体育じゃないのか、とクラスメイトが訊いたことがあった。すると、勝田は苦りきった顔をして言った。体育は嫌いなんだ、と。
外見は完全に体育教師なのに白衣姿の勝田。人は見かけによらないなあ、なんて考えていると、悪友が言った。
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