ただ好きと伝えるだけ

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「勝田、うるさいな」 「うん」 「あいつは元素記号なんかより竹刀の方がお似合いだ」 「僕もおんなじこと考えてた」  ははは、と二人して笑う。  勝田の声が一際大きくなった気がした。  程なくして四時間目が終わった。校内に弛緩したムードが流れる。授業を受けていなくても、なぜかほっとする。 「義文、どうする?」 「駅に行く」 「そっか。俺、弁当あるし学食行くわ」 「りょーかい。じゃな」 「おー」  僕は一足先に屋上を出る。  昼休み。学校が一番喧騒に満ちる時間帯。春の頃はぽかぽかしていて屋上は人気のスポットだった。でも今はただ暑いだけだから誰も好んで屋上で昼ご飯なんてしないだろう。と考えていたら女子生徒が一人、僕の横を足早に階段を上っていく。風に乗って墨の匂いがした。
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