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青い青い絨毯が伸びる。どこまでも広がる大草原は時折撫でるように吹く光風で波打ち、音を立てて揺らめいていた。海のように青々しいそこに、線を引くように一本の細い道が作り出されており、迷わないための道標として、先へ先へと続いている。
そして、その海の上を歩くように。その道を踏み締めて進む人影が一つ。
黒いローブを身に纏い、頭頂にはベレー帽を乗せている。足元は履き慣れた様子のレザーブーツで、背には上半身が隠れるほどのリュックを背負っていた。
決して大柄とは言えない。それどころか小柄で、伸びる肢体からは人形のように華奢であることが窺える。ただし、その歩みは強い。ふらつく様子も無くしっかりとした足取りで前へと進んでいた。
顔立ちもまた、人形のように幼く、そして美しかった。顔色一つ変えない表情は神秘さを保ち、透明のように澄んだ髪が、纏う雰囲気をさらに不思議なモノへと昇華させる。少女らしいあどけなさはなく、年相応の元気らしさも感じられない。歩く少女は、その澄み切った瞳で、ひたすらに目的地へと向かっていた。
旅人。
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