ただ好きと伝えるだけ

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 どうして僕じゃなく、他の誰かなんだ。という嫉妬。  僕にそれを言ってどうしろっていうんだ。という疑念。  どうして今ここでそういう話をするんだ。という苛立ち。  どうしてあいつ、何も言ってくれなかったんだ。という猜疑心。  ああ、たった四つだけじゃないか。でも、それらがぐちゃぐちゃとない交ぜになってしまったから無駄に多く感じたんだろう。 「義文?」  僕が答えないでじっと空を睨んでいるのを怪訝に思ったのだろう、悪友は顔を覗き込んできた。  大きな目。悪友の目は好奇心旺盛な少年のそれと同じように見える。口許だっていつも上方向に湾曲している。 「やっぱりショックか」  その言葉は僕の心を見透かしたように直撃した。僕は顔を逸らすことで反撃する。  すると悪友はヒヒヒッと嫌な笑い声を上げる。 「まあ、何だ。別に狙ってたわけじゃないんだろう? だったらいいじゃん」  悪友がこう言うのには、ちゃんと理由がある。  悪友とは、中学の時からこの関係を続けている。中学を卒業したらこの関係も区切られるのかと思っていたら、同じ高校に入学することになった。結果、こうして今も一緒に授業を抜け出す仲を続けている。
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