ただ好きと伝えるだけ

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 僕は中学の時に一度だけ沙希の話を悪友にしたことがあった。その時はまだ異性として意識していなかったからただの幼馴染みだとしか言っていなかった。だから、その時の知識をもってして悪友は今こう答えたのだ。  しかし、その知識は古かった。もちろん、悪友にとっては一度しかそのことを教えられていないから古いも新しいもないけど、僕にとっては古かった。  意識し出したのは、六月辺りだっただろうか。今から一か月ほど前か。  一言で言えば、女の子らしくなった。昔は髪が長いとうっとうしい! って言ってショートカットにしていた。服装だってスカートはすーすーするから嫌だ! って言っていつもラフなパンツを履いていた。一緒に遊んでいても率先してドッヂボールやら缶けりやらアクティブな遊びを好んでいた。誰からもボーイッシュに見えていたはずだ。中学校は私服だったから、小中合わせて九年間、彼女の性質に触れてきたわけだ。  それが、十年目にして転換期を迎えた。  高校に入る前―といっても中学二、三年あたりのことだが―何となく彼女を避けるようになった。彼女だけ、というより女子を避けるようになった。まあ、年齢的なやつだ。
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