均衡と…

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あの時の蒼ちゃんの言葉は ケーキを壊してしまったあたしを 慰める為かと思ったけど… 蒼ちゃんは本当に あたしの“おめでとう”が無いと 歳を重ねる事が出来ないのかもしれない 『何回でも言うよ? 蒼ちゃんが生まれてきてくれた 何より大切な日だもん。 これからだって、ずっとお祝いする』 あたしが真剣に言葉を向けると 慈しむように優しく見つめて 大きな掌で頭を撫でて… 『…ありがとな…』 そう囁いて静かに優しく 腕の中に包んでくれたから… 『蒼ちゃんも… 生まれてきてくれて、ありがとう…』 あたしも同じように囁きながら 素直に身を預けると 彼は抱き締める腕に力を込めた ーーー首筋に触れた 柔らかな感触を残したまま… 誕生日を迎えて一緒に祝うこと この世に生まれてくれた喜びを共に分かち合う ーーー今、思えば… 自分を愛せない人間は 自分が生まれた日を喜ぶ事も出来ないこと 彼は口には出さなかったけど 自身に関心を持てない事自体が その利他的な部分を表していたのかもしれない それでも、蒼ちゃんがここに居てくれる それがどれだけ幸せな事だったのか この時のあたしは理解してはいない ちゃんと気付いていれば良かったんだ… 17歳と14歳になった誕生日 この時、寄り添い会えた時間が… 彼と共に二人で過ごせた… ーーー最後の誕生日になった ・
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