均衡と…

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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 『蒼ちゃん、飛行機雲ー!!』 『本当だ…結構長く続いてる…』 空は快晴ーーーーーー… 誕生日を過ぎた5月の日曜日 気温も上がり風も暖かくなって バイクでドライブするのに最高の季節が訪れた あたしはいつも通りに 三神蒼志のバイクに乗せてもらい 何度目かの海へとやってきて… 『砂浜の方に下りてみる?』 防波堤から身を乗り出すあたしに 海岸線にバイクを停めた三神蒼志が問い掛ける 『うん、下りる!!』 あたしが元気良く答えると 三神蒼志はクスッと笑って こちらへと手を差し伸べて… ーーーあ… 差し出された掌に何故か胸がトクン、と 音を立てたのが分かったけど… あたしは胸の高鳴りを聞かないフリして 彼の掌に自分の手を重ねた コレって、多分… 今にも駆け出しそうな犬の手綱を 飼い主がしっかり掴んでる図…? そんな事を考えるあたしの掌を握ると 三神蒼志は少しだけ切なげに微笑んで… その表情に高鳴っていた胸が 一瞬だけきつく締め付けられた気がした ーーーどうして… そんな顔、するの…? 『蒼ちゃん…何かあったの…?』 三神蒼志の表情を見て あたしが思わず問い掛けると 彼は首を横に振りながらクスッと笑った 『ただ、こうしたかっただけだよ…』 三神蒼志は柔らかく微笑みながら 何も言わずに手を引いて歩き始めて… あたしと手を繋ぎたかっただけ…? 蒼ちゃんとこうして 手を繋ぐのは初めてじゃない 小さい頃はいつも どちらともなく手を繋いでいた でも再会してからは 互いに周りを気にする事を覚えて 人前では手を繋ぐこともなくなった だからなのか… 手を繋いで歩ける事が嬉しい… 蒼ちゃんの気持ちが あたしと同じならいいな… 彼と手を繋いでいると 幼い頃に戻ったような気がするのにーーー… あたしよりも大きくて… あたしよりも少しだけ低い体温… それを感じるだけで 心臓が音を立て続けるのは何故だろう ・
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