2人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
「やっと、私の出番だね」
周囲を彩る紅葉を、うっとりとした表情で見つめている少女が一人。
「アキ。あまり、はしゃぎ過ぎるなよ」
そして、少女の背後に佇む、少年が一人。
「フユに言われなくても、わかってるよ」
「で、使い魔の姿は決めたのか?」
「うん。これにした」
少年の問いかけに頷いた少女の手が光を帯びる。光はゆっくりと形を成していくと、その輪郭を一匹の犬へと変化させる。
「まあ、頑張れよ。多少の失敗なら、後で俺がカバーしてやるからさ」
「見てなさい。秋のお役目を立派に果たして、フユの引き継ぎを楽にしてやるわ」
「そうか、3ヶ月後を楽しみにしておくよ」
少年はひらりと手を振った。少女も踵を返す。
「よーし、行くわよ」
使い魔と共に少女は駆け出した。
「さてと、冬になるまで、俺はもう一休みするかな」
一塵の風が吹いた。秋の到来だった。
最初のコメントを投稿しよう!