第1章

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      アイ・ディ ?Please find me!?                                  宝生 時雨      1  賑やかしい晴れ着姿の男の合図で、スタジオ内がまばゆいライトによって一斉に照らされた。と、同時にあとで軽い耳鳴りがしばらく残ってしまいそうな大音響が流れ始めた。照明が照らす先には、総勢50組の色とりどりの派手な衣装に身を包んだテレビタレントがところ狭しと集められ、窮屈そうに雑然と立ち動いている。カメラに一番近い場所いわゆる最前列には、芸歴の長い者、実力のある者、何かしらの大きな力が働いてそこに立たせてもらえている者など、に囲まれて大きな花束とトロフィーを持って涙を流している女性タレントが中央に立っている。そして片や売れない芸人達や若手の芸人達が、後方の立ち位置から何とかテレビに映り込もうと、必死になって飛び跳ねている様がテレビモニターで伺えた。ここにいるほとんどのタレント達がそういったことを経験してきているだけに、特に最前列に並ぶタレント達は、華やかな笑顔の裏側で同情とも応援ともつかない思いを後方の彼らに対して抱いていた。 「それでは皆さん。今年もいい年になりますよう、お祈り申し上げます。そして今年も私達の活躍をご期待ください。それではまた来年お会いいたしましょう。ごきげんようっ。」  MCのお決まりのエンディングの台詞とともに、音楽のボリュームが更に大きくなり、最後に巨大クラッカーがスタジオの中めがけて盛大に鳴らされると 「OKです。皆さん長時間お疲れ様でした。」というディレクターの合図で、タレント達の緊張が一気に和らいだ。  終了とほぼ同時に、多くのスタッフが飛び散った紙吹雪の掃除や、番組セットの撤収に一斉に取りかかった。彼らのチームワークといい、その動きは装備さえ違え、軍隊そのものの機敏さだ。  その脇で、まだ売れていない新人芸人達は、スタジオから去ろうとする大物芸人の元へ走りより、口々に 「お疲れ様でした。今日はいつもよりもキレがあって最高でした。」 「これからもついていきます。よろしくお願いします。」 「師匠っ、師匠の元でもっと勉強させていただきたいのでまた仕事呼んでください。」
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