文化祭 ―2週間前―

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「――Z-031、起きなさい」 「…………」 「起きなさい、031」 「……ぃってえ!!」 成績表の角で頭を数回つついたところで、031はようやく目を覚ました。 いったい何が起きたのか分からない、というふうに、目を大きく見開いて、顔をきょろきょろと動かしている。 ――目が合う。 人間離れした、整った顔立ち。 「なんだ、先生か」031は安心したような寝ぼけたような声を出して、また眠ろうとする。 わたしは031の頭を叩いた。 「起きなさい、031。他の生徒たちは、もう全員寮に戻りました。 戸締まりがあるから、あなたも早く教室を出なさい」 「なんでだよ。先生、昨日は俺にだけ『帰るな』って言ったくせに」 「居残りでしょう。あなただけテストの成績最悪だったから」 「でも俺、まだ眠いんだけどな」 「だったら、寮に帰ってから寝なさい」 ――というより、そもそも何が『痛い』というのだ。 何が『眠い』というのだ。 ロボットのくせに――
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