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――――
「――ねえ、先生」
ふと、顔を上げる。
031はいつの間にか席を立ち、窓を開けて、外の景色を眺めているようだった。
冷たい風が部屋の中に入り、それが、031のシャツを揺らしている。
彼の目には、この色づいた美しい木々たちが、景色が、どんなふうに映っているのだろうか。
「――先生。もうすぐ、お別れだね」
やわらかな、声。
その言葉に、わたしは喉を鳴らす。
動揺する気持ちを悟られないよう、小さな声で、「そうね」とだけ返した。
そして、031の言葉を反芻する。
――『お別れ』。
それは、『どちらの意味になるだろう』。
す、と031が振り返る。
彼は目を細めて、静かに微笑んでいた。
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