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私はこの町の行く末を案じてしまった。
そんなことより、彼の名刺にはこう書かれてあった。「若林厳造」と。
「お爺ちゃん、名前ゴンゾウというのですか?」
私は、夥しい数の白い毛が飛び出している彼の耳もとに向けて、大声で尋ねた。
「おおそうじゃ、名無しのゴンゾウとは儂のことじゃ。」
「それはゴンベイでしょ。」
秘書が耳元で吠えた。
秘書に叱られたことで、いたずらっ子のような満足げな笑みを浮かべる老議員を見て、私はこの二人はわざとやっているのではないかと疑ってしまった。そして、実は私がこの二人にからかわれているのではないか、そんな不審さえ抱いてしまったのだ。
私は彼らとこれ以上会話をすることを諦め、つい黙り込んでしまった。
「こ、これかっ。」
その時、突然私の脳の中をある考えが電光石火のように駆け巡ったのだ。もしや、これは「ゴン蔵」が関係しているのではないか。思わず私を黙らせてしまった目の前にいる「厳造」。見事に私は彼の術中にはまってしまったではないか。「ゴン蔵」とは、相手を黙らせるスペシャリストなのではないのか。
急に私の眠っていた探究心が呼び起こされてしまった。
「ゴン蔵のルーツを知りたい。ゴン蔵とは一体何者なのだ?」
私の旅はここから幕を開けた。
故郷
私は旅の始めに、5年ぶりに故郷に帰ることを思い立った。そもそもこの旅を始めることになったきっかけは、「ゴン蔵」の存在を私に知らしめた両親や祖父母の存在にある。まずは彼らから「ゴン蔵」の存在をいつから知っていたのか、そして誰から聞かされたのか、そういったことを聞き出す必要があると判断したのだ。
「何や知らんけど、どういう風の吹き回しや。あんた変な病気でももろてきたんと違うか。」
実家に戻った私を見た母の開口一番の言葉がこれだ。もう少し歓迎してくれても良かろう。私は実家に帰ったことを少し後悔した。
「たまに帰ってくるくらいええやろ。」
「せやかて突然帰ってくるもんやさかい、何の用意もしとらんよ。」
「そんなんいつものことやないか。」
母の小言を5年ぶりに聞いている間に、よたよたと祖母が散歩から帰ってきた。祖母は私の顔を見るなり満面の笑みで声を掛けてきた。
「あら、お帰り。・・・・・・・・・・・・・・・・どなたさん?」
「・・・・・・・・?」
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