第1章

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 初めて参加の文化祭はどうなるかと思ったが、何事も問題なく過ぎていく。  交替の時間が来たので、わたしは会場を回る。文化祭会場を回るのは初めてのことだ。他のクラスの催し物に足を運ぶ。喫茶店が多かったが、掲示物などの展示も多かった。  興味が惹かれたのはふたつ。  ドラえもんについての展示と、地元を扱った展示だ。  前者は高校生にしては少々子供っぽい気もしたが、工夫がこらされており、ドラえもんという国民的な人気作品の展示だから万人向けだろう。訳のわからないマイナーな展示をするよりも、こうした展示のほうが面白いのではないだろうか。  後者は高校の周囲の街並みのジオラマが教室の真ん中に置かれていて、その完成度には度肝を抜かれた。  どちらを見ても、知らないことばかりでとても面白かった。  ドラえもんの漫画に出てきた道具をいくつも再現してあったし、地元なのに意外と知らない歴史があることを知った。  ??この文化祭でわたしは意外なことが分かったみたい。  文化祭ってどんなものか。準備がこんなに大変で、喫茶店のウェイトレスでも緊張して、でもとても楽しい。知識として知っていたけど、経験してみるとこんなに違うものなんだ。  一杯知ることが出来た、ありがとう、双葉。 「あれ? 双葉?」  いつの間にか授業は終わり、お昼休みに入っていた。  双葉はどこかに行ったらしい。  いや??瑠璃川双葉なんていう人物は果たしていたのだろうか? わたしはそんな疑いにとらわれた。  なぜそんなことを思うのか、わからない。  大切なクラスメイトのことを疑いたくはない。でも、いてもたってもいられなくなり、何人かに双葉について尋ねた。  結果は、狐につままれたようなものだ。  皆、瑠璃川さんを知らないという。  そう言えば、あの妄想はやけに生々しいというか、はっきりした感触があった。 「ひょっとしたら、その瑠璃川さんは魔女だったのかもしれないね」  クラスメイトの一人はそう言う。 「魔女?」 「ハロウィンはこの時期に現れる悪霊や魔女から身を守るための儀式だからね。日本では大人もわいわいと騒ぐお祭りみたいになっているけど」  ニュースでやっていたな。渋谷では大勢の若者が仮装していて、警備のために大量の警官が動員されたという。 「つまり双葉の正体は魔女で、文化祭に参加できなかったわたしのために魔法を掛けてくれたってこと?」
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