特殊クーポン

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 調べたら、いくつか何とかなりそうなのがあったが、いざ店に行くと、絵柄の解釈は合っているのかとか、そもそも、本当にこれでサービスが受けられるのかという不安が湧いて、パフォーマンスの提示を断念し続けた。  誰か、いかにもそれらしいことをテーブルやレジ前でしてくれていたら、俺も踏み切れるんだけどな。  そんなことを考えながら、たまたまクーポン使用可能な店に行ったある日、俺は、願ったりの光景に出くわした。  時間帯のせいか、比較的店は空いていた。だからだろう。俺のすぐ前に店に入って行った客が、注文聞きの店員の前でふいに奇妙な行動に出たのだ。  Tシャツの裾をめくり上げ、腹を出す。だが、残念なことにその先は、俺からは死角で見ることができない。  裾をめくり、腹を見せる。確かにクーポンにあった通りの行動だ。でもその先は。  絵柄には、めくった腹の横に棒が書かれていて、それを上下に振り下ろせという意味合いらしき矢印が記されていた。その後には『〇…-¥100%』。  俺の解釈だとこのクーポンは、服をめくって腹を出し、そこに指を押しつけ、それを上下に動かせば商品がタダ。そういう意味のものだ。でも、単に腹の上を指で辿るだけで商品がタダになるなんて、そんなことがある筈もない。  だったらと、俺が考えた解釈の続きは、指でなぞる範囲だ。  例えば、へその十センチ真上からきっちりへそまで。その範囲を超えていたり、横にずれていたりする場合はアウトで、一円足りと値引きは行わず、ただ、恥をかくだけという顛末。  そう考えたから、簡単そうでも、俺にはクーポンのパフォーマンスをする自信がなかったのだ。  でも今、実際にやっている奴を見て少しその気が湧いた。  死角で見えはしなかったけれど、指を動かしていた範囲はなんとなく判ったし、そもそも今は客がほとんどいない。恥をかいても大丈夫だ。  うまくいけば商品がタダ。ダメでも今ならちょっとの恥ずかしさ。これはもう、クーポンのパフォーマンスをするしかない。  そう思った時だった。
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