紫鳳の夢

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 これは、そんな、一人の女王を巡り寵を競った男達の物語である。 ______________ 『あ!あれを御覧よ。女王様の御輿だ』    賑やかな城下を華々しく着飾った一行が、ゆったりと優雅に通る。女王の輿の前を美丈夫揃いの衛兵隊が足並みを揃え行進し、輿の周りをいずれも仙女と見紛う程の美しい女官達が取り囲みながら行く。  女王の輿の後ろには、騎馬隊が控え、周囲に警戒を怠らない。女王一行は衛兵隊も女官も騎馬隊もいずれもこの世の者とは思えぬ見目麗しい者ばかりで、城下の人々は一同まるで絵巻物を見ているかのような気持ちになった。  だが、誰よりも街中の人々の目を惹いたのは、女王の輿のすぐ後ろ、黒毛の血統の良さそうな馬に跨がる黒衣の男であった。
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