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下校中、すれ違う女子高生がいた。
必ず犬を連れている。そして常に、制服姿。
着替える間も惜しいほど早く散歩したいのかと、彼女の愛犬家具合が微笑ましい。
犬にあれこれと話ながら歩を進め、心から楽しそうに犬とじゃれているその様子も、犬への愛情が駄々漏れだった。
見ているだけでくすぐったい。
「シバッ。今日は徳野公園にいこっか!」
背中で響く、彼女の明るい声。
ここからだと結構遠い公園の名前が出て驚いた。
そして、笑えてくる。
そうだった。
あの公園には大きな丸いドングリが沢山転がっていた。シバは、それが大好きだったな。
笑いを噛み締めながら、俺はドアを開けた。
「いつもありがとうございます」
「あら、ご機嫌ね?」
言いながら、愛想も恰幅も良いエプロンの女性が後ろを向いて叫ぶ。
「哲平くーん、お迎えよ」
その声と同時に、走ってくる哲平。
にこにこの笑顔を、俺もしっかりと抱き止めた。
「哲平くんの大好きなお兄ちゃんは、哲平くんのこと大好きね」
目尻を垂らして微笑む保育士さんの顔が、先刻の自分と重なった。それがまた、くすぐったい。
あの彼女と、話がしたいと思った。
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