第1章

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下校中、すれ違う女子高生がいた。 必ず犬を連れている。そして常に、制服姿。 着替える間も惜しいほど早く散歩したいのかと、彼女の愛犬家具合が微笑ましい。 犬にあれこれと話ながら歩を進め、心から楽しそうに犬とじゃれているその様子も、犬への愛情が駄々漏れだった。 見ているだけでくすぐったい。 「シバッ。今日は徳野公園にいこっか!」 背中で響く、彼女の明るい声。 ここからだと結構遠い公園の名前が出て驚いた。 そして、笑えてくる。 そうだった。 あの公園には大きな丸いドングリが沢山転がっていた。シバは、それが大好きだったな。 笑いを噛み締めながら、俺はドアを開けた。 「いつもありがとうございます」 「あら、ご機嫌ね?」 言いながら、愛想も恰幅も良いエプロンの女性が後ろを向いて叫ぶ。 「哲平くーん、お迎えよ」 その声と同時に、走ってくる哲平。 にこにこの笑顔を、俺もしっかりと抱き止めた。 「哲平くんの大好きなお兄ちゃんは、哲平くんのこと大好きね」 目尻を垂らして微笑む保育士さんの顔が、先刻の自分と重なった。それがまた、くすぐったい。 あの彼女と、話がしたいと思った。
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