第1章

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 でもさすがに髪の毛はボーボーなので急いで整えて。 「お化粧、どーしよ」 「いらない。小春はそのままで十分カワイイよ」  上着を羽織りつつ、ニコニコしながら臆面もなく言い切る彼。 「そう? じゃいっかぁ?」 「ん! カワイイ!」  私の調子に乗りまくった返事に、更に輪を掛けてノリノリな対応をして、彼はニコニコ斜め掛けの鞄を身につける。  私だって身の程は知っている。  自分が『カワイイ』に分類されるような女でないことは、百も承知だ。  更に言えば、彼の『カワイイ』が百パーセント本気だなんて思ってないくらいに、冷静なつもり。  お前は口先の魔術師かってくらい、何度も私を誉めそやす彼の言葉なんて、申し訳ないけど全てを信じる気にはなれない。
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