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「行きますよ、ハデス様」
敢えてもう海王とは呼ばずに、いにしえの名で彼を呼び、その肩に触れた。
その義務と責任を思い出させるように。
「行くぞ」
とみなを向いて言う。
ペルセフォネを抱いているので出遅れるだろうハデスのために、先に兵を率いて歩き出す。
砂姫、これがすべての始まりだ―
なまぬるいお前の楽園はもう消えた。
二人の親友を失い、帰れる場所もなく、お前に安住の地はないだろう。
そして―
「お前は遠からず、すべてを失うよ」
真実を暴き、唯一残った愛人アレスも、そう遠くない未来、お前の前から消えるだろう。
美しく整然とした白い廊下に踏み出す。
先頭を歩く自分には、兵たちの姿は見えず、そこはただ、始業を告げるチャイムの鳴り響く、平穏な校舎にしか見えなかった。
第一幕 完
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