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「でも、無傷だもん。
うちのお父さんも大丈夫って太鼓判押してくれたわ」
砂姫の父親は確かに医者だが―
「お前んちの親父さん、『歯医者』だろうが」
あははーと笑う彼女は、やっぱり人の話など聞いていない。
彼女の両親は、彼女に似てアバウトというかなんというか。
だから、昔からついつい、口煩く言ってしまうのだが。
「しょうがねえなあ、もう~。
その代わり、調子悪くなったらすぐ言えよ」
言い出したら聞かない彼女の性格を重々承知しているので、仕方なくそう言ったとき、砂姫は、あっ、と何かに肩がぶつかったように身を引いた。
「すみませんっ」
と誰にともなく振り返り謝ったあとで、
「……しまった。
あの男と同じことをしてしまった……」
などと呟いている。
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