彼の日常

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「私の方が一緒にいられないよね?」  彼の兄は一人暮らしをしているわけではない。  髪を染めたりピアス開けたりと、まじめとは言い難い性格をしているが、夜遊びをして家にあまりいないわけでもない。  しかも、彼は部屋もお兄さんと同じだから、家にいればほとんどべったりと一緒にいるのだ。 「そんな事ないよ。兄ちゃんとは朝と家に帰ってからだけだから……」  彼が指を曲げて何かを数えている。 「ほら!8時間しかないんだよ!」  彼は私に向けて折った指を見せた。 「2時間も少ないんだから!」  一瞬、私の思考が停止した。  何てくだらない。  しかも、これって私の時間は授業中もカウントされていますよね?  なのに、お兄さんとの時間は睡眠時間がしっかり除外されていますよね?  イライラがつのり、思考がまとまらない。  さて、何て言い返してやろうか……。  その時、部屋の中で電子音が鳴った。  彼と私の目がテーブルの上に向く。  この音は私の携帯電話じゃない。  彼の物だ。  しかも、聞き覚えがある。  彼が嬉々として携帯電話を取った。 「もしもし! 兄ちゃん?」  心なしか声のトーンが上がっている。 「うん、うん……。わかった! すぐ帰る!」  彼はすぐに荷物をまとめ始める。 「え、ちょ、ま」 「じゃあ、また明日!」  止める間もなく彼は出て行ってしまった。  こういうのが嫌で話し合いをしようと思ったのに、何も解決せずに終わってしまった。  これじゃあいつも通りのパターンじゃないか。  理性の限界だった。 「……この、ブラコンがああぁぁぁっ!」  私の叫び声がむなしく響いた。 end
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