トウカイテイオー

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 トウカイテイオーは7冠馬シンボリルドルフの初年度産駒として誕生した。日本の史上最強馬は種牡馬として成功するか?―その鍵を握っていたのが彼だった。皐月賞まで4戦4勝、この成績は父と同じである。重賞勝ちはないもののクラシックを意識した2000mを中心に使われ、レースぶりも18頭の中では抜けた存在だった。    大外18番からの出走となった皐月賞。繋の柔らかい独特のフォームで、馬群の外をゆったりと進んでいく。ヤヤ重の馬場状態のわりには速いペースで進んでいったが、テイオーは馬なりのまま先行集団にとりついていく。直線、安田隆騎手の手が動いた瞬間テイオーはあっという間に先頭に立ち余裕を持ってゴール板を駆け抜けた。2着には3冠馬ミスターシービー産駒のシャコーグレイドが入った。父ルドルフの背で岡部騎手が行った仕草を安田騎手が再現して見せた。『一番』ではなく『まずは一冠』である。    ダービーでもテイオーは大外枠に入った。枠順確定後、安田騎手は『テイオーにはピンクの帽子がよく似合うんです』と言っていた。そして、レースでは馬群の外を難無く追走し、一度も馬群に入れる事なく4角も余裕の脚色で外を回り、直線に向いてからスパート。彼は府中の坂を斜めに駆け上がりゴールでは3馬身差をつけていた。完勝。安田騎手はテイオーの背で、指を2本突き出した。親子二代、無敗の3冠馬誕生。多くの人が実現可能な夢と思った瞬間であった。    しかし、歓喜から3日後、左後ろ脚の骨折が判明し、3冠馬の夢は儚く消えてしまった。  
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