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人間とは小理屈を覚えた獣である。
その身体は数ある獣の中でも非常に脆く、あまりにも蒙昧でひ弱な存在。
特に生物として究極なまでに完成されたドラゴンとは比べ物にならない。
事実、ドラゴンは人間が誕生するまで、この世界で最も古く偉大な存在であったことには間違いない。
ただ疑問に尽きない点は一つ。
それほどにまで脆く弱い人間が何故今世界で一番繁栄しているのか。
答えは単純なもので、先に上げた『小理屈』を覚えた獣と言う点である。
人間はひ弱だ、だがその一方でその可能性は無限大だ。知恵の研鑽は大気を漂う不可視な力を練り上げ絶大な威力を誇る『魔術』を生み出し、生命の始まりである炎への憧憬と未知なる力への渇望が『呪術』へと昇華された。
生き残る為に人々は狩りを牧畜を農作を武術を法律を国家を防壁を建物を、次々に生み出した。
まさしく人間の知恵が生み出す可能性は無限大、遂には最も偉大な存在であるドラゴンを人の身で倒した英雄すら現れた。
だが、先にも挙げたように、それでも人間は『小理屈』を覚えた獣に過ぎないのだ。
無限大の可能性を持つ一方で、その愚かさと蒙昧さは変わらない。
やがては強き者が弱き者を虐げ支配を始めたのだ。
後世の言葉を借りるならば、俗に言う『歴史の中の暗黒時代』である。
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