1人が本棚に入れています
本棚に追加
「その紐はね、特注で作ってもらったものなの。いくら引っ張っても切れないから、たくさん暴れても大丈夫よ。ああでも、ここは病院だから大きな声は出さないでね。
なにもかも失いたくないでしょ?」
優しく語りかけてくる声に、咄嗟に頭に浮かんだのは病室にいる母さんの姿だった。
全身の力が抜け、視界が暗くなっていくのを感じた。
目の前にいる女が、人間の皮を被った悪魔にしか思えなかった。
「響くん」
恍惚とした表情で微笑み、ねっとりと絡みつくような甘い声で名前を呼ばれた次の瞬間、首を絞められーー悪夢は幕を開けた。
・
最初のコメントを投稿しよう!